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2014年 12月 22日
「ヨシザカについて私が知っている2、3の事柄」 拾遺篇5.発見的方法 今までで一番読んだ回数の多い雑誌は「都市住宅」7508だ。 この雑誌は68年の創刊から75年末まで植田実さんが編集長を務めた伝説的な雑誌で、売れる売れないよりも深い問題意識に根ざして住居系のあり方を問い続けた、今日の雑誌とは一味も二味も異なる骨っぽい雑誌だ。 75年の年間テーマは「町づくりの手法」で、8月号は「特集|発見的方法 吉阪研究室の哲学と手法その1」だった。この号は研究室のそれまでの活動を75年の時点で先輩達がまとめたもので、(80年にヨシザカは亡くなったから)その2は出ていない。 当時大学2年だった私は(ずいぶん細かい文字の多い雑誌だな)と思いながらも本屋で買って拾い読みした。研修室に入ろうと思い始めた頃には真剣に読んだ。そしていつしかバイブルとなった。 多くの重要なキーワードが見開きの2ページ程度で解説されている。いわばこれはショーケースで、その内容はイントロダクションに過ぎないのだが、全体像はなんとなくわかる。 それらを束ねる言葉、特徴的な手法として、特集の標題にもなった「発見的方法」という文章が始めの方に出てくる。書いたのは地井(昭夫)さんだ。 それはこんな書き出しで始まる。 「発見的方法とは<いまだ隠された世界>を見い出し、<いまだ在らざる世界>を探るきわめて人間的な認識と方法のひとつの体系である」 そして昭和40年に大火被害を受けた伊豆大島の元町を訪れた時のことを次のように語る。 「・・・はじめて大島を訪れて焼跡に立った時、私たちがなし得た最初のことは、確信の持てる方法論を何も持たないままいわば<焼跡に放り出された自分>を発見することであった。そして裸のまま、自らの目と足で島のあちこちを歩き廻っているうちに、そこに<私たちによって作り変えられるべき世界>ではなく、全く逆に<私たちひとりひとりがそれによって支えられている世界>を発見することになった。この2つの<発見>の帰納的総括から、もはや発見的方法としかいいようのないものの存在を確信するに至ったことは必然的であった。 ・・・発見とは徹底的に部分的であってよい。私たちの伊豆大島から始まった発見的方法の展開は、その後全国各地において試練に立たされることになった。都市において、山村において、農村において、漁村において、島において、それは必ずしも<見通しの明るい>ものではないが、しかし<部分の合理>が存在することについてだけは確信がある。そもそも地域計画とは、認識論的にいえばいまだ隠された<部分の合理と自立>を発見することであり、方法論的には<いまだ在らざる部分の新たなる顕現>を決断することに他ならない。」 少々堅い書き方だが、地井さんの高揚感が伝わってくる。 地井さんはその直前に丹後・伊根浦で海辺に舟小屋が並ぶ美しい集落と出会い、それに魅せられ、肉体と感じる心を駆使したフィールドワークで発見的方法を実践しながら多くの漁村の成り立ちと住居の始まりの研究にのめり込んで行った。 (その成果は地井さんの死後、遺稿集「漁師はなぜ、海を向いて住むのか?」にまとめられた。これを読むと論文集でありながらどこか詩的なものを感じる) 地井さんとは酒の席で話をしたことがある。 たぶん、コンパか何かで、私が、人間は20代までに直感的に感じたこと考えたことを30代以降は時間をかけて検証しているに過ぎない、と生意気なことを言った時、ヨシザカの隣の席で飲んでいた地井さんが突然、 「キミ、よくわかるね!本当にそうだよ!!」とうれしそうに相槌を打った。 地井さんの卒計はアーキグラムのような未来都市が連続するもので、一つの単位を精妙に描いた後それをコピーしてつなげたものだが、こういう作業をしながら、本人はその嘘臭さに初めから気づいていて、案外冷めていたのかもしれない。 だからそれとは180度異なる、人と人とがつくる共同体の重要性に惹かれ、その研究に没頭したのだろう。 私は地井さんのような研究者ではなくデザイナーだ。 デザインはともすると形態や色のことだと感違いされ、その新奇性に目が奪われがちだが、その根幹には、連綿と続いて来たコミュニティの歴史や気候、風土、習慣など諸々の要因が絡んでいる。それらを心と身体を総動員して謙虚に学び、発見しながら、良いものは継承し、悪いものは未来に向かって組み立て直し、提案する。 発見的方法はそのような方法だと思う。 そして私なりに実践している。 かずま
by odyssey-of-iska5
| 2014-12-22 23:17
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