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2015年 03月 26日
![]() ![]() 「ヨシザカについて私が知っている2、3の事柄」 拾遺篇7.ある登山家の家 以前、友人のKさんが主催する成城の建築ツアーに同行したことがある。 Kさんは本当はグラフィックデザイナーで、本のデザインやサイン計画などが本業だが、趣味が高じて建築探偵家の二足のわらじを履くようになり、いつのまにかそちらの方が専門になってしまった変わり者だ。それもそんじょそこらの建築探偵家ではなく、超が付く程ののめり込み様で、一緒にまちを歩いていると必ず「この辺に◯◯さんがつくった××があるんですよ、ちょっと観に行きましょうか」と誘われ付き合ったことは何十回もある。頭の中に地図と建物と建築家がいつもプロットされてて自動的に反応する感じだ。 だが、さすがのKさんもこの建物(樋口邸 '66)はノーチェックだったらしい。 実は私もこの建物は雑誌「建築」7101のU研特集でチラッと見ただけで、実際それが現存するのか、どこにあるのか知らなかった。だからツアーの最後の方で突然この建物が目前に現れた時の驚きと感動は凄かった。それまで見て来たすべての建物の印象が吹き飛んでしまった。 都内でも珍しい自然がそのまま残る国分寺崖線に沿ったゾーンを歩いている時だった。 突然、急傾斜のコンクリートでできた屋根がグワッと現れた。 まるで怪獣か生き物のようだ。 何なんだ?これは!という感じで、全員上を見上げた。 それは荒々しいコンクリートの打ち放しで、急傾斜の所々には鎖や足を掛ける穴などもある。まるでロッククライミングの練習場だ。(今ならさしづめボルダリングの石が敷き詰められてる感じか) みんなでザワザワ話をしていると、初老の住人がそれに気づき、2階からゆっくり降りて来る。実は先程似たようなケースがあり、そこの住人にひどく叱られたばかりだ。 ヤバい!まただ!! ところが、ここの住人はやさしく微笑みながら「どうしました?」と尋ね、Kさんがツアーの目的を説明すると、笑いながらこの家ができた経緯を話してくれた。 それによると、住人のHさんもW大の山岳部の出身で、そのつながりからヨシザカとU研に設計を頼むことになったらしい。 打合せの途中で誰かが冗談のように屋根にも登れたらおもしろいと言ったので、それもいいですなあと言ったらこうなったとか、平面も直角ではなく角度が振れているが、それも四角よりおもしろいと言われ、そうですなあと相槌を打ったらそうなったとか、とまるで他人事のように飄々と話をされる。 執着心が無いというか、自然体というか、聴いてて不思議な仙人の話を聞いてるような感じだ。 「建築」7101を見ると、この家は最初に斜線制限一杯に建物を寄せて外側の屋根の形状を決め、その中に3方向の軸線を組み合わせながら120°の変則六角形の平面を押し込み、最終的にはスタディ模型を繰り返しながら全体は決められている。 六角形は円に少しでも近づけようとする気持ちだ。 つまり、大屋根の下に宇宙がある感じだ。 とても大きい建物に見えるが、前面道路と背後の崖との距離はあまり無く、敷地は意外と狭い。当然ながら4層分のフロアを行き来することになるが、登山家のHさんにとっては日頃から山登りの練習をしている感覚なのかもしれない。 作り手と施主が一致している希有な建物を久しぶりに見た。 こういうのをいつかつくってみたい。 かずま
by odyssey-of-iska5
| 2015-03-26 15:49
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